ネットメディアの面白さが発揮される時の一つは、参加者が予期せぬレスポンスを産み出し、それがドライブしだしたとき。
もちろんUGC(user-generated content)自体は、以前からもある概念だし、
それを産み出すプラットフォームが用意された事自体への変化の言及も、当の昔からされてはいる。
ただ広告という観点で、ふと思った傾向について、今日は2つの事例からピックアップ。
・傾向1
「発信者側」があえて確信犯的に、プラットフォームをわざわざ「広告の文脈で」用意して
「ユーザに遊ばす場を作る」という傾向。
例えば、2008年のカンヌ「CYBER LIONS」から「BRONZE」を受賞した「実況ジェネレーター2008」
セルジオさんと、松木さんの声だけをネタとして用意する。
あとは自分で動画をアップして、それを組み合わせてね、というスキームだが、
確実に、その後とんでもないものが出来ることを確信して、GTさんは制作している。
だから途中からこんな作品が産まれてくる(音量ONで是非。これはもはや作品です)。
・傾向2
「広告の受け取り側」が、「あくまで自分の作品」としてアピールするためのツールとして、
そのプラットフォームを率先して使う、という傾向。
↑のオフィシャルな作品は、いたって普通なPVなのだが、
以下は、Dennisという人物が、この楽曲にAppleのCMとしてもし自分が作ったとしたら、という観点で
自分の作品としてチャレンジングに創って、アップロードした作品。
そして実はこれが、とてもクリエイティビティが発揮されていて、オリジナルより断然に面白かったりするのだ。
プラットフォームを使って「自分の作品」として、それを公開しているところ。
そして結果も、オリジナルの再生回数が 425,409 に対し、彼の作品は 897,600 と倍の数にもなっていること。
The Bird and The Beeにとっては、迷惑な話かもしれないし、
セルジオさんにとっても、迷惑な話かもしれない。
でも、やっぱり面白いから、まあいいか的になるんじゃないだろうか。
結局のところネットメディアの面白さは、そんな配信側の許容範囲の広さ加減にあるのだと、やはり思う。
ジェネレーター系のコンテンツは、あえてボールを受け手側に渡してみることで、よりそのブランドに
愛着を持ってもらおう、というマスの文脈からは全く逆の発想にあることに、面白さを感じる。
TVCMとは異なり、このゆったりとした世界観を眺めているだけで、
この世界が織り成す「人」「音」「場」から、少しずつ、広告という意識の垣根がをとりはらわれていく。
広告に接するときの、「ちょっと引き気味モード」でもなく、
検索後に接するときの、「前のめりモード」でなく、
softbankブランドに対して、「共感モード」を創っていこうとする様は、
意識変容を起こすためにWebで出来る、コミュニケーションの1つの在り方だと思う。
これは、各サービスへの誘引のためのサイトなのだが、
単純にラインナップだけを、一覧サムネイルで並べたエントランス・ページであれば、それはパンフレットと変わらない。
それであれば、わざわざWebでやることの意義も薄い。Flashを使う理由も見えない。
せっかく来てくれたんだから、ソフトバンクの世界にまずは少しでも触れてもらおうよ、
急にサービス名だけ羅列されても、ふつう分からないよね、という制作の意図がとても伝わってくる。
もっと身近に自分のようなWebプロダクション側で出来ることがありすぎる事に気づき、はっとされた事例。
制作は、thaさん。
毎度毎度、素晴らしい仕事をされすぎて、へこむ限りです。
「Adobeの製品を使えば、たったトランプ1枚のモチーフからでも、これだけのクリエイティビティが発揮できるんですよ」
という広告メッセージ。
すばらしい!
素直にテクノロジーのすばらしさがわかる、Webサイト広告だと思う。
特に今回のような「ああ、Adobeの製品はやっぱりいいね」と思わせるためには、
圧倒的な、シンプルで力強いクリエイティブ・アイデアを魅せつけてしまうことの方が、有効だと思う。
なにも、インタラクティブ性を利用することだけが、Web広告の手法だけではなく、
目的に沿って、創るモノを考えていく事が本質なのね、という事が再確認できる事例。
その場に配置された必然にはっと気づく、そしてその「広告気づき体験」が楽しい思う、
「アンビエント広告」の手法がとても面白い。
従来の広告の手法(枠を買ってその中で展開する)では、
この情報過多な時代には、本当に「その人が欲しい」と思っていても、
「驚き」そのものが与えられないため、「伝達」されないことが多い。
その意味で、「明日の広告」でも書かれていたnikeのキャンペーンは、
よりインサイトに踏み込まれた、アンビエント広告としての最も分かりやすい事例だと思う。
http://www.frederiksamuel.com/blog/2008/06/mcdonalds-open-late.html
今日はこれを、今のWebで使われているいくつかの技術を使っていくと、
こんなことが可能になる、という事例。
1. Universal Everything
手段が変わるだけで、こんなにも違った感動体験が創られる。
ブラウザから一歩出るだけで、インタラクティブ技術は、もっと広告に近づける。
今、アテンションを獲得するためには、中心に来る「アイデア」が希薄の状態で、
「なんたらジャック」などやったところで、さしてメッセージは伝わらないだろう。
私たちWeb側のアイデアが、外に向かい加算されていけば、もっとおもしろい広告は出来るはず。
the secret location
http://www.thesecretlocation.com/
人は、そこに興味を感じるストーリーが見えると、コミュニケーションとして継続できる。
もっと聞きたいし、もっと見たい、と思う。
だから2時間もある映画は、ストーリーを展開していくことで、
視点や気分やドキドキを創りながら、メッセージを届けていく手法を取っている。
今日は、では、そこにWebという要素を付け加えた場合、の事例。
例えば、そのストーリー展開の中で、Webの持つインタラクティブ・メディアとしての
特性である、「行為という対話」が入ると、こんなサイトのような興味のキープの仕方が出来る。
このサイトは「the secret location」をキーワードにして、
一枚のカードで始まるサスペンス・ムービーから、興味を持ってもらうプロダクションのサイト。
これ一発のムービーで、このプロダクションのアイデア力を
分からせてしまおう、という意図が巧いと思う。
すくなくとも、まず話題には上るよね。
初めて会ったときとかに。
こういう、伝えたいことに対して、
既存のメディアの手法の組み合わせた、新しいアイデアこそが、
悩むべきことなんだけど、うーん巧いね、嗚呼気づかなかったよ、で
終わってしまうのが、自分としては相当にへこむところ。
ぐっと入り込んでしまうストーリーを持つ広告は、強いです。
キャンペーンにおける、イベントとWebの役割分担について、ひとつの在り方を感じる事例。
「360度」をコア・コンセプトとし、
リアルなイベント会場では、360度50台のカメラで、参加者を撮影してくれる。
参加者全員には、そのスナップをFlash待ちうけとしてプレゼントすることで、「その場で盛り上がれる」。
一方通行的なメッセージ伝達のあり方でなく、まず「自分の体験」と「自分のモノ」として、
参加できる/してもらう点が、キャンペーン設計の肝なのだろうと思う。
そしてWebでは、参加者全員の内容が公開されている。
その仕組みによって、このイベントへ参加してくれた人は、きっと訪れてくれるだろう。
なぜって「自分」が載っているのだから。
そしてそこから自分の周りの友達にも教えていくことへつながっていく。
広く、浅い広告コミュニケーションではなく、深いコミュニケーションを、ピンポイントで確実に行う。
サイトのレポーティング・コンテンツにおける、自分の出来上がった画像を見て、
うれしそうな参加者の顔からも、良質なコミュニケーションが図れている事がよく分かる。
また、「リアル」なイベントである事が伝達されているその模様から、
たとえ自分が参加してなくとも、第三者として素直に心が動く。
このサイトを見た後では、ヴィダルサスーンそのものへ少し共感が持てる。
自分が受けた印象からしても、広告として達成すべきことがなされている成功事例だと思う。
制作は、imaginativeさん。
imaginativeさんは、ブランドの肌触り感覚が、いつも巧く具現化されている。
今回のポイントは、
少し前のアディダスの「CELEBRATE ORIGINALITY」キャンペーンもしかりだけれど、
ブランドへの共感を創るための手法として、まず「自分化」から始めているということ。
最初に、ブランドから個人の方へ歩み寄って「自分への体験」を提供する。
そこで「自分ゴト化」してもらい、共感を得ていこうという文脈。
Webという、個人的なインタラクティブ・メディアが広告と機能するための、
有効な手段と実例は、ここ数年一部でかなり顕在化してきている。
それに気づけるか、気づこうとしているか。
自分たちWebプロダクションは、シビアに問われて続けていると思う。
「消費者と企業をつなぐ、オープン・ダイアログ」をコンセプトとした、
SuggestionBox.comのサービスには、次世代の企業Webコミュニケーションへ示唆するものが多い。
このサービスは、
ユーザにとっては、参加している各企業のサービスや商品に対し、自由に意見が言うことが出来る、
またアイデアをユーザ同士で出し合うことができる「場」である。
企業にとっては、それらのコメントが担当者に送られることで、マーケティングデータにも、
サポートツールにもなりうる。
また、このサービスには、よりオープン性をユーザへ可視化するため、「検討中」「対応中」「却下」など、
企業側のステータスを公開する仕組みを用意している。
現在このサービスに参加している企業をざっと見ると、
・Disneyland Resort
・GAP
・Hilton
・Starbucks
のような、サービス系の企業も多くありながら、
・Appleおよび各プロダクト、サービス
・eBay
・Amazon
・Dell
・Google関連の各サービス
のような、すでに自社サイト内で充分にそのサポートする「場」を用意している企業ですら、
積極的に参加していることが、ここでのポイントではないか、と思う。
つまり、企業サイトだけでなく、ソーシャルなメディアでオープンに行われている「ある特定の場」でも、
積極的にユーザと対話を行おう、という姿勢を見せている、という事自体の重要性ということ。
換言すると、「ソーシャル・メディアへの最適化の施策の一つ」とも言えるかもしれない。
今や企業サイトは自社メディアとして、サポート機能・コミュニケーション機能は、十分持ちえているし、
それをマーケティング・ツールとして用いることにも積極的だ。
例えば、「無印良品・モノづくりコミュニティー」のような、ユーザとのパートナーシップのの在り方。
このようなオンライン上のソーシャルな「オープン・ダイアログの場」は、今後日本でも展開がされていくだろう。
そこで、企業に必要とされるのは、「私たちは、皆さんときちんと向き合いますよ」という、
態度の表明だろうと思う。
その第一段階として、企業のネットリテラシーとユーザリテラシーの質が、
きっとまずあからさまに現われることだろう。
さて、これから、このようなサービスが日本に導入されたとき、企業はどのようにユーザと向き合うか?
私たちWebプロダクション側にまず必要とされるのは、企業側へ向けての、
このようなユーザ・コミュニケーションへの意義と啓蒙の説明だと思う。
という文脈から始めながら。
スウェーデンのクリエイティブ・エージェンシー「farfar(ファルファル)」による、
携帯電話のキャンペーンサイトが素晴らしい。
http://www.get-out-and-play.com
これぞ、「今」のインタラクティブ・メディアの使い方の見本。
Webにおける、広告とクリエイティブが、見事に結ばれた素晴らしいサイトだと思う。
ローディングのアソビゴコロから始まって、
その後のチェコアニメ的なアナログ感覚の映像と音楽が、まず気持ち良く、楽しい。
そこから、人を使ったピンボールゲームで、くだらなーく遊んでもらう。
それまでの世界観がここで、ピンボールの擬人化につながり、面白く、飽きさせない。
これらのディテールと、リズム感をうまく効かせながら、全体として
見事なエンターテイメント(まず、もてなす・楽しんでもらう)が形成されている。
このゆるい体験を経る中で、自然に企業や、広告という「モノ」への心理的な垣根が
取り払われていく状況を作っていることが、この企画の肝だと思う。
その後、携帯製品の訴求に移るのだが、
よくある「ここで急に醒めてしまう」感を、ディテール含めた世界観の一貫性で、
ぎりぎりまでセーブしているところが、また素晴らしい。
例えば、商品の切り替え時に、携帯を握りつぶしちゃうアニメーションとか。
この心理モードのバランス感覚の一貫性、ストーリー展開の具合は、
ユーザとクライアントへの思いやり以外の何物でもない。
「広告」たるための「Web」は、どうあるべきか?についての見事な見本であり、回答の一つだと思う。
farfarの作品といえば、昨年カンヌGoldを受賞した「VisitSweden」も同様に、
エンターテイメントから、広告に結びついている、素晴らしいサイトだった。
まず楽しんでもらう、というエンターテイメントの広告文脈は、
Webの在り方へ示唆をもたらす、確実な回答の一つだと改めて思う。
映画は、クリエイティブ・アイデアの宝庫。
タイトルバック、アングル、カット割り、ポスター、、、
その中で、タイトルバックが素晴らしいクリエイティブをいくつかピックアップ。
SUBWAYのよさは、自分の食べるモノのカスタマイズ性にあるのだが、
それをもっと良く知ってもらおう・体験してもらおう、というWebコミュニケーションのコンテンツ。
SUBWAYは、そのカスタマイズ性が売りとは言えど、逆にその手順の不明さから、
障壁になっている人もきっと多くいることだろう。
それを柔らかく背中を押してあげよう、というためのコンテンツ。
コンテンツ自体は、可愛らしいクリエイティブでありながら、
手順は、店舗で頼んでいる手順と全く同じ。
その場合、私のようなSUBWAY好きな既存顧客にとっては、もう完全なる店舗気分。
(これを作り終えたら、ちゃんと食べたくなった)
そしてその体験を行動へとつなげているのが、オリジナルクーポンの発行という手段。
それにより、いつも行ってるSUBWAYに行ってね、という店舗誘引だ。
ケータイにクーポンを送らせることで、便益を提供している。
びっくりするようなことは何もされていないけれど、しごくまっとうな、
地に足のついたキャンペーンだと思う。
欲を言うならば、Webサイト自体のコンテンツにもう少し、オチというか、
余白の部分が欲しかったところ。
自分で作ったサンドイッチを使って何かする、なり、第三者につなげるような工夫なり、
という箇所だろうか。
やっぱり、友達へ教える、一緒に連れて行かせる、あたりをゴール設定に
してあげた方が良かったのでは?というのが、少し感じたところ。